DX推進、「何をやめるか」を決められない会社が停滞する

DXが進まない会社ほど施策が増えていく
DX推進会議で、毎月のように新しい施策が増えていく会社があります。チャットツールを入れ、ワークフローを電子化し、生成AIを試し、データ基盤も整える。それでも現場からは「忙しさが減らない」「入力先が増えた」「結局Excelも残っている」という声が消えません。経営側から見ると投資しているのに変化が鈍く、現場側から見ると新しい作業だけが上乗せされていく。DXが停滞する典型的な場面です。
ここで見直したいのは、導入したツールの性能ではありません。先に見るべきなのは「何をやめたか」です。紙の申請書を残したまま電子申請を加え、Excel台帳を残したままSaaSへ入力し、定例会議を残したままダッシュボードを作れば、デジタル化は効率化ではなく業務の増築になります。古い倉庫を壊さず、その横に新しい倉庫を建て続けるようなものです。床面積は増えても、探し物の時間まで減るとは限りません。
DX推進で重要なのは、新しい仕組みを増やすことではなく、既存業務を減らしながら経営資源を再配分することです。「何を導入するか」だけを会議の議題にすると、施策数は増えても組織は軽くなりません。

やめられない原因は意志ではなく意思決定構造
現場では「全部必要に見える」という感覚がよく起きます。月次資料も、承認印も、定例会議も、「昔から使っている」「誰かが見ているかもしれない」「止めて問題が起きたら困る」という理由で残ります。この感覚を行動経済学で捉えると、損失回避の影響が見えてきます。損失回避とは、同じ大きさなら「得する喜び」より「失う痛み」を強く感じやすい心理傾向です。
業務を廃止すると、何かを失う可能性が目立ちます。一方、その業務を残し続けることで毎月何時間を失っているかは見えにくい。だから「止めたら困るかもしれない」という未来の不安が、「続けることで確実に発生している工数」を上回ってしまいます。ここで問題なのは、担当者が保守的なことではありません。廃止によるリスクだけが可視化され、継続による損失が可視化されていない設計です。
たとえば10人が毎週30分使う定例会議なら、年間では約260時間です。準備や移動、会議後の確認まで含めれば負担はさらに膨らみます。この会議を続ける理由が「念のため」であるなら、「やめるリスク」だけでなく「続けるコスト」も同じテーブルに載せる必要があります。DX推進とは、こうした見えない維持費を可視化し、判断材料を揃える作業でもあります。
業務を4つに分けると判断が進みやすい
廃止判断を感覚から切り離すには、既存業務を「残す・やめる・自動化する・検証する」の4つに分類します。重要なのは、最初から全部を正しく分類しようとしないことです。判断できない業務は「検証する」に逃がせばよいのです。いきなり廃止するのではなく、2週間だけ停止して問題が起きるかを見る。そこで影響がなければ廃止し、支障が出れば復旧する。この小さな実験を入れるだけで、廃止は賭けではなく検証になります。
手順はシンプルです。
・残す:売上、法令、品質、安全などに直接影響する業務
・やめる:目的が曖昧で、利用実態も説明できない業務
・自動化する:必要だが、人が繰り返す合理性が低い業務
・検証する:必要性に意見が割れるため、一時停止で影響を見る業務
この分類で特に重要なのが「誰のための業務か」を確認することです。「営業部長が見るかもしれない資料」では弱く、「営業部長が毎週月曜の案件判断に使う資料」まで具体化できれば、必要性を検証できます。目的、利用者、利用頻度、作成工数の4点が答えられない業務は、廃止候補として扱いやすくなります。
ここで一度、自社を確認してみてください。
・新しいシステム導入後も旧帳票が残っていないか
・作成者はいるが、利用者が曖昧な資料がないか
・意思決定を伴わない定例会議が続いていないか
・「念のため」が継続理由になっている業務がないか
3つ以上当てはまるなら、DXの停滞要因はIT不足ではなく、廃止判断の仕組み不足かもしれません。

廃止判断を個人の勇気に依存させない
「この業務、もうやめませんか」と最初に言う人には負担がかかります。長く続いてきた仕事ほど、誰かの過去の判断や役割と結び付いているからです。だからこそ、DX担当者の熱意だけで削減を進めると、途中で止まりやすくなります。必要なのは、廃止を個人提案ではなく定期的な経営プロセスにすることです。
実務では、四半期ごとに「廃止候補」を集める場を設け、各候補について①目的、②年間工数、③停止時の影響、④復旧方法、⑤判断責任者を決めます。とくに復旧方法を先に決めることが重要です。「問題が出たら戻せる」と分かれば、停止実験への心理的抵抗は下がります。完全廃止の前に1週間、2週間と停止期間を設ければ、現場も事実を見ながら判断できます。
DX推進の責任者には「新しいものを入れる権限」だけでなく、「古いものを止めるための手続き」を持たせる必要があります。導入申請には予算と承認ルートがあるのに、廃止には明確な手続きがない会社は少なくありません。この非対称性を残したままでは、組織は増やすことはできても減らすことができません。
DXの成果は導入数ではなく減った仕事で測る
DXの成果指標も変える必要があります。「ツールを3つ導入した」「AI研修を50人が受けた」だけでは、経営成果につながったか判断できません。見るべきなのは、転記が何時間減ったか、承認段階が何段減ったか、会議が何本なくなったか、判断までの日数が何日短くなったかです。
診断では、まず現状の業務量と滞留点を見ます。設計では、残す仕事と消す仕事を分けます。実装では、停止実験や自動化を小さく回し、結果を数値で確認します。この順番なら、DXが「最新ツールを入れる活動」から「経営資源を空ける活動」に変わります。空いた時間や人材を、顧客対応、新規事業、営業改善など、本当にやりたい仕事へ振り向けられるからです。
DX推進で停滞している会社ほど、「次は何を導入するか」の前に「今月は何をやめるか」を議題に置いてみてください。そこで候補が一つも出ないなら、非効率な業務が存在しないのではなく、廃止を判断する構造がまだない可能性があります。
あなたの会社では、DXによって新しく始めた仕事の数と、やめられた仕事の数、どちらを経営会議で確認していますか?
「自社のDXで、まず何をやめるべきか?」と少しでも気になった方は、以下のフォームからお気軽にご相談ください。【初回無料】にて、AIとマーケティングを組み合わせたDX・業務改革領域で「貴社の課題抽出」「業務や事業の次の一手」となる新たな可能性を提案いたします。
💡合同会社RASHは【マーケティング×IT×生成AI×行動経済学/脳科学/心理学などの知見】で、「課題の明確化」「解決策と費用対効果の提示」から、「貴社・部門の”どうにかして解決したい”」を全力でお手伝いいたします。【DX/AXで「やらなくていい」をゼロに、「やりたい」を形に】顧客の現場に密着し、最短距離で価値を創出するForward Deployed Engineer(FDE)として、以下の3軸で事業を展開しています。
📒経営・営業向け生成AI/DX導入支援(FDEスタイル)
現場の課題を直接抽出。コスト1/60、売上・生産性200%アップを実現するハンズオン型サポート。
📒心理学・科学的根拠に基づくマーケティング・研修
行動経済学や脳科学を駆使し、顧客の意思決定をデザインする集客設計や組織教育。
📒事業成長のためのシステム開発・AI構築
単なる受託ではなく、事業運営やピボット支援まで踏み込んだ「勝てる」システムの設計と実装。
ITエンジニアの技術力、マーケターの戦略眼、そしてメンタリストの心理洞察。これらを現場の「前線」で融合させ、事業を次なるレベルへと引き上げることを得意としております。
「DX施策を増やしているのに業務が減らず、何をやめればよいか整理したい」
「紙・Excel・SaaSの二重運用を棚卸しして、廃止候補を決めたい」
「営業部門の商談効率を上げたいが、どこをAIで自動化すべきか分からない」
「広報やバックオフィスの作業が増え続けているので、業務を整理したい」
「新規事業のアイデアはあるが、どこから仮説検証すればよいか分からない」
…もっと抽象的なご相談でもOKです。
あなたのアイデアやお悩みを【マーケティング×IT×生成AI×行動経済学/脳科学/心理学などの知見】でビジネスの未来につなぎます。気軽にお問い合わせください。あなたのビジネスを伸ばす「AI活用型システム開発、AI導入支援/研修/ハンズオン型サポート/コンサルティング」など「弊社ができること」はこちら



