例外を認めれば例外が広がるという、ルールの崩壊

一つの例外が、新たな例外を生む
「今回は事情が違うから。」この言葉は、人を思いやる判断にも聞こえます。しかし、組織運営では最も慎重に扱うべき言葉でもあります。サッカーのワールドカップでは、米国代表FWフォラリン・バログン選手の出場停止処分が猶予されたことを受け、イングランド・サッカー協会(FA)が、自国選手ジャレル・クアンサ選手についても同様の措置を求める可能性が報じられました。さらに英国議員もFIFAへ処分延期を要請するなど、一つの判断が新たな要求を生む状況となっています。これはスポーツだけの話ではありません。会社でも、「今回は特別」という判断が前例となり、次から次へと同じ要求が生まれる場面は少なくありません。
FIFAで起きた「例外」の波紋
今回の報道では、バログン選手の処分猶予という判断が、イングランド代表にも「同じ基準で判断してほしい」という主張につながりました。もし同じ規定が適用されるのであれば、自分たちにも同じ権利があるという考えは自然な流れです。人は公平性を重視するため、一度認められた例外は「前例」として認識されます。問題は例外そのものではありません。「なぜ例外を認めたのか」を説明できない状態が、組織の信頼を揺るがす原因になります。
なぜ例外は広がるのか
現場では担当者が善意で判断したつもりでも、その出来事は次の判断基準になります。感覚では「今回は仕方なかった」と思っていても、組織には「前回は認めた」という事実だけが残ります。その結果、「今回だけ」が「前回も認めた」「なぜ今回は認めないのか」という流れへ発展します。感覚的な判断を構造的に捉え直すと、例外とは単発の出来事ではなく、新しい判断基準を生み出す起点であることが見えてきます。
あなたの組織でも、一度だけ認めた判断が今も新しい基準になっていないか、次の3点を確認してみてください。
- 例外を認めた理由を文書で説明できますか。
- 同じ状況が再び起きても同じ判断をしますか。
- 担当者が変わっても同じ結論になりますか。

企業でも起こるルールの崩壊
例えば、経費精算、有給申請、勤怠管理、契約条件などで「今回は特別」と判断した経験はないでしょうか。その場では合理的でも、半年後には「前も認めてもらいました」という言葉になって返ってきます。ルールよりも前例が強く働く組織では、公平性が少しずつ失われ、管理コストも増えていきます。
リーダーが守るべき判断基準
優れたリーダーは、ルールを守る人ではなく、ルールが守られる理由を示せる人です。災害や健康上の理由など、本当に例外が必要な場面はあります。しかし、その場合でも「なぜ今回は例外なのか」を誰もが理解できる形で説明できなければなりません。ルールは人を縛るためではなく、公平性を守るために存在します。目の前の一件だけではなく、「この判断が半年後、一年後にどんな前例になるのか」という視点を持つことが、経営者や管理職には求められます。
まとめ
今回のFIFAを巡る議論は、スポーツ界だけではなく、企業経営にも通じる教訓を示しています。一つの例外が認められれば、「なぜ自分たちは違うのか」という声は必ず生まれます。例外を認めるかどうかではなく、その例外を説明できるかどうかが組織の信頼を左右します。あなたの会社では、「今回だけ」が積み重なり、新しいルールになってしまっているものはありませんか。
参考URL
https://newspicks.com/news/17045847/body/
Reuters(2026年7月7日)「サッカー=イングランド、退場選手への処分猶予要請も バログン問題波及」
「今回だけ」という判断が積み重なり、組織のルールや公平性が揺らいでいると感じることはありませんか。制度設計や運用ルールの見直しは、一つの判断ではなく、組織全体の信頼づくりにつながります。
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