💡職場の若者は本当に「成長」したがっているのか? その言葉の裏にある深層心理

「成長したい」その一言に隠された、若手社員の“本当の叫び”を聞き逃していませんか?
経営学者である舟津昌平氏が指摘するように、現代のZ世代をはじめとする若手社員のキャリア観は、我々が考えている以上に複雑な様相を呈しています。彼らが頻繁に口にする「成長したい」という言葉を、額面通りに受け取ってはいませんか?
その言葉の裏には、「肯定される集団に属していたい、でも悪目立ちして叩かれたくはない」という、極めて繊細な心理が働いている可能性があります。この深層心理を理解せずに行われる育成施策は、貴重な時間とコストを浪費するだけでなく、若手社員との間に見えない溝を深めてしまう危険性を孕んでいます。書籍『若者恐怖症――職場のあらたな病理』からの洞察を基に、彼らが発する「成長」という言葉の矛盾を解き明かし、真の育成ヒントを探ります。
参考)職場の若者は本当に「成長」したがっているのか? その言葉の裏にある深層心理
https://shueisha.online/articles/-/254903
なぜ若者は「成長したい」と口にするのか?メディアが作り上げた“成長神話”の正体
そもそも、「成長意欲の高い若者」というイメージは、どこまでが実態なのでしょうか。この問いには、社会全体が作り上げた”空気感”が大きく影響しています。メディアやビジネス系インフルエンサーによって「成長」という概念がポジティブなものとして拡散され、それに同調しないことは、 마치意識が低いかのような印象を与えかねません。
このような状況下で、「成長したいですか?」と問われれば、多くの若者は肯定的に答えるでしょう。しかし、それは必ずしも内発的な強い動機とは限りません。実際には、転職者数が劇的に増加しているわけではないにも関わらず、キャリアアップのための転職が”当たり前”として語られる。この乖離こそが、若者の本音と建前を理解する上で極めて重要なポイントとなるのです。「職場に不満はあるけれど、実際に行動を起こすほどではない」という層が多数派である現実を、私たちは直視する必要があります。
「ワークライフバランス、重視しますか?」この質問が、本音を引き出せない根本的な理由
若者の本音が見えにくい構造は、「成長」に限った話ではありません。例えば、「ワークライフバランスを重視しますか?」という問いについて考えてみましょう。この質問に対して、否定的な回答をする人がどれほどいるでしょうか。
「バランスが取れている状態」は、定義上、望ましい状態を指します。これを否定することは、「私はバランスの崩れた状態を望みます」と公言するようなものであり、社会的に見て不自然です。ある学生が「バランスできている状態をイヤって言う人いるんですか?」と素朴な疑問を呈したように、このような問いは、相手の本質的な価値観を引き出す上であまり機能しません。
「成長したいか」という問いも、これと全く同じ構造を持っています。社会的に「善」とされる概念への同調圧力が働き、知らず知らずのうちに本音を隠させてしまうのです。私たちは、こうした「社会的望ましさ」というフィルターの存在を常に意識し、質問の仕方そのものを見直す必要があるのかもしれません。
“平均”からの脱落恐怖が生み出す、インスタントな「成長実感」への渇望
金間大介氏の著書『静かに退職する若者たち』によれば、若者の成長志向の高まりには、二つの側面があるといいます。一つは、ごく一部に存在する本質的な「意識の高い」層。そしてもう一つが、大多数を占める「平均値からの脱落への恐怖」を原動力とする層です。
後者にとっての「成長」とは、SNSで流れてくる同世代の活躍を見て、「自分も何かやらなければ」と焦る気持ちの裏返しであり、本質的なスキルの探求というよりは、不安を解消するための”お守り”に近いのかもしれません。短期間で手軽にスキルが得られるという誤解も、この傾向に拍車をかけています。結果として、「本気で成長したいわけではないが、そう言っておかないと不安」という心理から、社会全体で巨大な「成長神話」が形成されていくのです。
「自己肯定感」という名の幻想。若者が本当に求めているのは、他者からの承認という名の“燃料”だった
現代の若者を理解する上で欠かせないのが、「ありのままでいたい」と「何者かになりたい」という、一見矛盾した二つの欲求です。自分らしさを大切にしたい一方で、他者と比較して特別な存在でありたいとも願っている。この根底にあるのが、近年よく使われる「自己肯定感」という言葉の正体です。
しかし、通俗的に使われる自己肯定感は、その実、「他己肯定感」とでも言うべきものです。つまり、自分一人で自分を肯定しているのではなく、「他者から認められること」によってはじめて、自分の価値を実感できるのです。この承認欲求が満たされない状態が続くと、若者は自己を肯定できなくなり、精神的な安定を失ってしまいます。彼らの行動原理を理解するには、この「他者からの承認」という“燃料”がいかに重要かを認識することが不可欠です。
「イケてるけど、イタくない」― Z世代の絶妙なポジショニング戦略に、組織マネジメントのヒントが隠されている
若者の承認欲求は、彼らのSNS利用にも色濃く表れています。ある若者は「イケてるグループには入りたいけど、痛いヤツだとは思われたくない」と語ります。これは、肯定される側、つまりマジョリティには属していたいけれど、突出して他者から嫉妬されたり、異端視されたりするリスクは避けたい、という絶妙なバランス感覚を示しています。
この心理は、キャリア観にもそのままスライドします。「みんなが成長したいと言うなら、自分もそちら側でなければならない」という同調圧力が働く一方で、本気で取り組んで失敗するリスクは負いたくない。だからこそ、本当に時間がかかり、痛みを伴う「成長」そのものよりも、手軽に得られる「成長しているっぽい感覚」、すなわち「成長実感」で満足しようとする傾向が生まれるのです。
3年待てない若者 vs 3年は短すぎると嘆く上司。この“時間軸のズレ”こそが、すれ違いの根源だ
「成長実感」という言葉は、若者のニーズを的確に捉えた、実に便利な発明と言えるでしょう。「実感」を得るために、必ずしも本質的な「成長」は必要ありません。例えば、一日限りのワークショップやオンライン研修に参加するだけでも、何かを学んだ気になり、「成長を実感」することは容易です。
しかし、言うまでもなく、人が本質的に変わるためには、あるいは専門的なスキルを習得するためには、膨大な時間がかかります。特にキャリアの初期段階では、投下したコストに見合う成果がすぐに出ない、いわゆる”修業期間”が不可欠です。「石の上にも三年」という言葉を時代遅れだと笑うかもしれませんが、キャリア全体を見渡せば、三年という期間は決して長くはありません。むしろ、三年程度で完結するような成長は、その後のキャリアを支える太い幹にはなり得ないのです。
なぜ彼らは、短期的な「成長実感」を求めるのか?その矛盾の裏にある合理的な“心の会計”
もちろん、若手時代の三年間の成長「率」が、その後のキャリアにおいて極めて重要であることは間違いありません。しかし、本来は時間のかかるものである「成長」を志向しながら、「三年も待てない」と短期的な成果を求めるのは、論理的に考えれば自己矛盾をきたしています。
この矛盾こそが、若者のキャリア観の核心を示唆しているのではないでしょうか。彼らは、不確実な未来のために長期間のリスクを取ることよりも、今この瞬間に得られる確実な「承認」や「実感」を重視する、ある意味で合理的な判断をしているのかもしれません。この価値観の違いを理解せず、一方的に長期的な視点を押し付けるだけでは、両者の溝は深まるばかりです。
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